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股関節可動域制限~改善するための評価ポイント~

 大腿骨頸部骨折、人工股関節全置換術(以下:THA)など股関節疾患において股関節の可動域制限が問題になる場面を多く経験すると思います。股関節に制限があることで、靴を履く動作、歩行など様々なADLの障害が現れます。そのため、可動域の改善は必要なことです。

 そこで今回は、股関節の可動域制限を改善するために見ておきたい評価ポイントについて伝えていきます。

 大腿骨頸部骨折、THAの病態については、下記の記事をどうぞ。

 

fuji-riha.hatenablog.com

 


股関節の運動学

  まずは、可動域改善のために必要な股関節の運動学についてです。

股関節は、寛骨臼と大腿骨頭からなる臼状関節である。そのため、3軸の動きを伴い、屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋の動きが可能です。

下記にそれぞれの方向への正常可動域を記します。

屈曲 125 外転 45 外旋  45
伸展 15 内転 20 内旋 45

これらは、純粋な1軸方向への運動を測定してものでです。

しかし、股関節には頚体角、前捻角というものがあるため、股関節の軸に沿って動かす際は、3軸の複合的運動が必要です。

頚体角:前額面から見た際の大腿骨頭頸部と骨幹部がなる角度です。正常では125°あります。

前捻角:大腿骨を上から見た際、大腿骨頭頸部と骨幹部の角度であり、骨頭が前方へ向いている角度です。正常は、15~20°である。

具体的な複合的な運動方向は

屈曲+外転+外旋  伸展+内転+内旋 です。

この複合的な動きが股関節にとって一番負担がかかりにくい運動といえます。

そのため、術後早期や股関節に痛みがある段階での可動域訓練では、股関節を傷めないためにも、この複合的な運動での関節可動域運動が重要です。

 さらに関節が動く際は、副運動というものが起こります。この副運動が阻害されると関節の可動性に大きく影響してきます。

では、股関節の大腿骨の副運動は、

運動方向 大腿骨副運動        
屈曲 後方滑り 外転 下方滑り 外旋  前方滑り
伸展 前方滑り 内転 上方滑り 内旋 後方滑り

後でまた説明していきますが特に問題となるのが大腿骨の後方滑りの運動です。

 もう一つ、可動域の改善するうえで必要なのは、股関節と骨盤の運動の関係性についてです。股関節と骨盤は、隣り合っているため、動きは連動しています。そのため、上腕骨と肩甲骨において上腕肩甲リズムがあるように、大腿骨と骨盤においても大腿骨盤リズムがあります。

 上記に記したように股関節屈曲可動域は、125°とされています。しかし、解剖学的に純粋な股関節の屈曲は、約90°までしかありません。では、なぜ、正常可動域は、125°なのでしょうか?

そこで、骨盤の動きが関与してきます。股関節を屈曲した際、屈曲10°までは、骨盤は前傾方向に動きます。10~90°屈曲した際は、骨盤後傾、腰椎後弯方向へ動くとされており、これが大腿骨盤リズムです。つまり、純粋な股関節屈曲は90°までであり、それ以上の可動域は、骨盤後傾、腰椎後弯運動が必要であるということである。

 

 では、これらの股関節の運動学を踏まえたうえで、可動域制限の原因や評価法について説明していきます。

股関節屈曲制限の評価ポイント

 股関節屈曲制限に対して大きく問題となっているポイントは、

・深層外旋六筋の柔軟性低下

・股関節前面筋の柔軟性低下

・腰椎‐骨盤の可動性低下  の3つです。

下記に屈曲を制限する原因、評価について説明していきます。

 

・深層外旋六筋の柔軟性低下

 深層外旋六筋(梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋の6つ筋から構成)は、THAにおいて切開されていることや、怪我前より骨盤が後傾しており股関節が外旋しているなどと様々な原因によって硬くなりやすい部分である。実際、臨床でもここが硬い人達は多い。では、なぜ、屈曲を制限するのか?

 深層外旋六筋は、骨盤から大腿骨の大転子に付き、股関節のすぐ後ろを通っている。

そのため、深層外旋六筋が硬くなることで大腿骨の骨頭が前に押し出され、運動軸が前方へ変位します。そうなると、股関節の運動軸がずれるだけでなく、骨頭の後方への滑り運動が阻害されます。そのため、まず、第一に深層外旋六筋の柔軟性を確保し、股関節の運動軸を正常に戻すことが必要です。

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〈評価法〉

 簡単に評価する方法を合わせてお伝えします。

まずは、股関節内旋可動域を測定してみましょう。その後、触診にて実際に筋肉が硬いのかどうかを確認してみてください。

 

・股関節前面筋の柔軟性低下 

 股関節前面筋が屈曲制限の問題となる場合は、主に屈曲時に股関節前面に痛みがみられる場合が多いです。屈曲時に硬くなった股関節前面筋のインピンジメントが起こる場合です。

 深層外旋六筋が硬くなることで、骨頭が前方へ変位し、股関節の前方を通る腸腰筋に過剰なストレスが加わる状態になります。そのため、腸腰筋は、硬くなりやすく、機能不全に陥ってしまいます。腸腰筋の機能不全により、姿勢制御をするために、2関節筋である大腿直筋、大腿筋膜張筋の過剰に働き、柔軟性が低下している状態に陥ります。

 そのため、痛みがみられる場合は、腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋の柔軟性の向上に合わせ、深層外旋六筋の柔軟性、腸腰筋の機能改善が必要になってきます。

〈評価〉

 どの筋が硬くなっていて、痛みが発生しているのか確認しないといけません。そこで、触診と合わせて、整形外科的テストを使用し、評価していきます。

腸腰筋→Tomas test

大腿直筋→Ely test、踵殿距離テスト

大腿筋膜張筋→Over test

 

詳しい評価方法は、下記の記事を参照してみてください。

fuji-riha.hatenablog.com

 

 

・腰椎‐骨盤の可動性低下

 股関節のストレッチを行ているのになかなか可動域が改善しないという方は、腰椎‐骨盤の可動性も一度見てみてください。

 上記の股関節の運動学で説明したように、股関節の運動には大腿骨盤リズムがあります。そのため、股関節を屈曲する際、腰椎、骨盤は一緒に動くということです。なので、股関節の可動域のみ完全に改善したとしても90度程度しか曲がりません。そのため、屈曲する際は、腰椎の後弯、骨盤の後傾運動を一緒に評価する必要があります。

〈評価〉

  腰椎の後弯の評価の評価とはしては、PLF(腰椎後弯可動性)テストがあります。

背臥位で股関節屈曲可動域を測定する際、骨盤を固定したときの屈曲可動域と固定しないときの可動域の比較することでも、腰椎‐骨盤に原因があるのか、股関節に原因があるのか評価することも可能です。

 

+α 大殿筋、中殿筋の柔軟性低下

上記の3つが最も臨床において最も大きく影響してくるポイントです。しかし、これだけで改善しない症例もいます。その際は、股関節の伸展筋である。大殿筋、中殿筋(後部繊維)の柔軟性を評価してみください。股関節屈曲により、伸張されるため柔軟性低下していることで制限因子となります。

〈評価〉 

股関節屈曲+外転+外旋方向から内転+内旋方向に動かしたときの制限が大きいのか確認します。純粋な屈曲の方が、大殿筋、中殿筋が伸張されるため制限が大きくなる場合制限因子となっている場合が多いです。合わせて触診を行います。特に腸骨稜、転子部が硬くなりやすいため、触診してみてください。

股関節伸展制限の評価ポイント

 次に股関節伸展制限において大きく問題点になっているのは、

・股関節前面筋の柔軟性低下

・深層外旋六筋の柔軟性低下 の2つです。

では、伸展制限に対しても原因と評価について説明していきます。

・股関節前面筋の柔軟性低下

 股関節前面筋は、股関節を伸展したときに伸ばされるため、硬くなっていると、伸展方向の運動を妨げてしまいます。股関節前面筋でも特に、硬くなりやすく制限の因子になるのが、腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋である。屈曲制限についてでも書いたように、骨頭の前方変位があると腸腰筋には、過剰なストレスが加わるため、硬くなりやすく、機能不全に陥りやすいです。その代償として、大腿直筋、大腿筋膜張筋が過剰に働き、硬くなります。そうして、硬くなった筋が伸展制限の制限因子となっていることが多いです。

 そのため、腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋の柔軟性向上に加えて、腸腰筋の機能改善が必要です。

〈評価〉

 伸展制限の原因を探すために、まずは、触診にて筋の硬さを確認します。それに合わせて整形外科テストを行い評価していきます。

腸腰筋→Tomas test、膝関節伸展位での股関節伸展制限

大腿直筋→Ely test、踵殿距離テスト、膝関節屈曲位での股関節伸展制限

大腿筋膜張筋→Over test

 

・深層外旋六筋の柔軟性低下

 伸展制限でも、深層外旋六筋の柔軟性低下は、影響してきます。先ほども書いたように深層外旋六筋の柔軟性低下がみられることで、骨頭の前方変位が生じます。そのため、正常な股関節の運動から逸脱した状態で動くことになります。また、骨頭の前方にある腸腰筋は、常に過剰なストレスを受けている状態であるため、硬くなりやすい状態を作ってしまいます。そのため、腸腰筋の柔軟性を向上させてもまたすぐに硬くなり、元に戻ってしまうということです。なので、なかなか伸展制限が改善されません。

 なので、深層外旋六筋の柔軟性も合わせて、確保しておきたいです。

〈評価法〉

まずは、股関節内旋可動域を測定してみましょう。その後、触診にて実際に筋肉が硬いのかどうかを確認してみてください。

まとめ

 股関節の可動域制限を改善するうえで大切なポイントは3つ、

・深層外旋六筋の柔軟性

・股関節前面筋の柔軟性

・骨盤‐腰椎の可動性    です。

可動域を評価する際は、まずこれらを見てみてください。

まとめてみた結果、股関節の屈曲、伸展可動域を改善ためには、内外転、内外旋に作用する筋が原因になることが多いの股関節の全方向の可動域の改善が必要ですね!

 

もう一つポイントとしては、可動域を拡大した後は、必ず運動を行ってもらい、拡大した可動を含め自分で使ってももらうようにしてくださいね!

 

今回参考にした本はこちら

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。ぜひ、参考にしてみてください。コメントもお持ちしております。